令和7年度(2025年)下半期は、物価や人件費の高止まり、景気の先行き不透明感など、中小企業や個人事業主にとって資金繰りの難易度が増す時期です。「利益は出ているのに現金が足りない」「銀行融資を受けたいが不安がある」―こうした声も少なくありません。こうした環境を乗り切るためには、今の財務状況を定量的に評価し、課題を早期に把握することが重要です。
この記事では、銀行融資に強い視点から、令和7年度下半期に向けて使える具体的な数値付き財務チェックリストを紹介します。
自社の現状を確認し、資金ショートを防ぎ、安定した経営を実現するための参考にしてください。
目次
1. 資金繰り・キャッシュフロー
- 手元現金・預金残高は月商の1.5〜2か月分以上あるか(例:月商500万円なら750〜1,000万円以上)
- 売掛金の回収期間は平均60日以内か
- 買掛金・借入金の支払いに遅延がないか
- キャッシュフロー計算書を月次で作成しているか
2. 利益・収益構造
- 売上総利益率(粗利率)が30%以上か(業種により異なるが目安)
- 営業利益率が5%以上か
- 前年同期比で売上が±10%以上変動していないか
3. 財務安全性・借入
- 自己資本比率が20%以上あるか
- 借入金の返済負担率(年間返済額 ÷ 営業CF)が70%以下か
- 短期借入金比率が総借入金の50%を超えていないか
4. 銀行融資・外部評価
- 直近3か月の試算表をすぐ提出できる状態か
- 資金調達の目的と金額を具体的に説明できるか(例:「年末賞与で500万円必要」「新設備投資1,200万円」など)
- 銀行との面談は半年以内に行っているか
5. 将来への備え
- 来年度の資金繰り計画をシミュレーションしているか
- 金利上昇1%時の返済負担を試算しているか
- 補助金・助成金・制度融資などの最新情報を把握しているか
評価基準(×の数で財務体質を診断)
- 0〜3個:良好
→ 財務状況は概ね安定。今後の投資や融資も前向きに検討できる状態です。 - 4〜7個:要注意
→ 資金繰りや利益体質に改善の余地あり。銀行融資を受ける場合は試算表整備や改善策を示すと効果的です。 - 8個以上:要改善
→ キャッシュフローや財務基盤が弱く、資金ショートや融資審査で不利になる可能性が高いです。早急な対策をおすすめします。
まとめ
令和7年度下半期は、物価や人件費の上昇、金利や景気変動など、企業の資金繰りを取り巻く環境は引き続き厳しさを増すと考えられます。こうした中で、自社の財務状況を定期的にチェックし、課題を早期発見・改善することが経営を守る最善策です。
今回のチェックリストでは、「手元資金」「利益率」「自己資本比率」「銀行との関係」など、金融機関の評価にも直結する項目を数値基準で整理しました。
×が4〜7個なら改善ポイントが見え始めており、8個以上なら資金繰りや財務基盤の再構築が急務です。
大切なのは、“問題が起きてから”ではなく“起きる前に”対策を打つこと。
資金調達や融資の相談も、余裕のあるうちに動くことで選択肢が広がります。