はじめに:利益よりもキャッシュが先!
売上もそこそこあるし、黒字決算だったのに――
なぜかお金が足りない。
これは、中小企業や個人事業主に非常によくある悩みです。いわゆる「黒字倒産」に直面する前に、手を打たなければなりません。
そのためのキーワードが、資金繰り改善です。
本記事では、資金繰りの基本とあわせて、今日から取り組める改善策を具体的にご紹介します。数字が苦手な方でも大丈夫。「お金が回る経営」への第一歩として、ぜひ最後までお読みください。
資金繰りとは?:お金の“出入り”を管理すること
まず、資金繰りとは簡単に言えば、
会社のお金の「入るタイミング」と「出ていくタイミング」を見える化し、調整することです。
たとえば、
- 仕入れ代金は先に払う
- 売上代金はあとで入る
この「時間差」によって、お金が足りなくなるのが資金繰りの苦しさの正体です。
資金繰りが悪化する典型パターン
- 売掛金の回収が遅い
- 固定費が高く、収益に占める割合が大きい
- 設備投資や広告費が重なった
- 銀行融資に頼れない(または信用がない)
- 急な支払い(税金、賞与、修繕費など)が発生した
資金繰りに悩んでいる経営者の多くが、数字ではなく“感覚”で資金を見ている傾向があります。
資金繰り改善の具体策10選
ここからは、実際に効果のある資金繰り改善策を紹介します。自社でできるものから、外部との調整が必要なものまで幅広くカバーしています。
① 資金繰り表を作る:まずは「見える化」
ExcelやGoogleスプレッドシートで作成可能。
最低限、以下を記入しましょう。
- 今月〜3か月後までの入金予定(売上・融資など)
- 今月〜3か月後までの支出予定(仕入・給与・返済など)
- その結果としての月末残高
「あと何日で現金が尽きるか」がわかるようになれば、対応は前倒しで打てます。
② 入金サイトの短縮:お金を早く“取り戻す”
- 請求書は納品後すぐに発行
- 支払いサイトを短縮(例:月末締め翌月末 → 翌月10日払い)
- クレジットカード決済や事前入金制度の導入
特に小規模事業者は、「現金回収のスピード」が命です。
③ 支払いサイトの延長:キャッシュアウトを遅らせる
仕入れ先や外注先に対して、支払い期日延長の交渉をしてみましょう。
- 月末締め翌月末払い → 翌々月払いへ
- 「一括払い」→「分割払い」への変更
- クレジットカード払いに変更(引き落としが遅れる)
無理な交渉はNGですが、誠実な相談は信頼を強化する機会にもなります。
④ 経費の見直し:固定費を削る
- 使っていないサブスクの解約
- 不要な広告費や接待交際費の見直し
- 事務所家賃の交渉や移転
- 外注コストの削減
「売上が増えるまで待つ」より、「無駄な支出をすぐ削る」方が早いのが経費対策の良さです。
⑤ 在庫管理の見直し:現金が「倉庫に眠っていないか?」
在庫は資産ですが、現金化しなければキャッシュにはなりません。
- 不良在庫や死蔵品の早期処分
- 適正在庫量の見直し
- 仕入れのロットを小口化
「売れるまで待つ在庫」は、実質的に“お金のムダ使い”になっている場合があります。
⑥ 資金調達の見直し:銀行融資は“困る前”に頼む
資金繰りが厳しくなる前に、金融機関との関係を構築しておくことが重要です。
- 日本政策金融公庫や制度融資を活用
- 金利や返済条件の見直し
- すでにある借入の借り換え(リスケ)
「いまは資金に余裕があるから…」という時期にこそ、手を打っておくのが経営者の視点です。
⑦ 補助金・助成金を活用する
手元資金の負担を減らすために、補助金や助成金の活用も有効です。
- 小規模事業者持続化補助金
- 事業再構築補助金
- 雇用調整助成金
- IT導入補助金
採択には申請書の作成などハードルもありますが、専門家に相談すれば成功率は大きく上がります。
⑧ 定期的な利益のストック化:「内部留保」の確保
利益が出た月にすべて使わず、一定割合を会社の“貯金”に回す意識を持ちましょう。
- 固定費の2〜3ヶ月分の現預金をキープ
- 税金・賞与・設備投資など将来の支出に備える
この“余白”があるかどうかで、事業の安定感が大きく変わります。
⑨ 支払時期を分散させる
意外と見落とされがちなのが、支払日の集中。
- 税金・賞与・仕入れ・返済が同じタイミングだと資金ショートのリスク大
- 月中・月末に分散して交渉する
- クレカやリースで支払い日をコントロール
**「いつ何が出ていくか」**を把握することが最大の防御策です。
⑩ キャッシュフロー経営への転換
最終的には「資金繰り表をつける」から一歩進み、キャッシュフロー経営に転換するのが理想です。
- 利益計画ではなく、キャッシュ計画を持つ
- 利益ではなく現金残高をKPIにする
- 毎月の資金繰りMTGを社内で実施
“お金が残る経営”こそが、企業を守り、成長させます。
まとめ:資金繰りは「数字で整える」「仕組みで回す」
資金繰りは、センスや感覚でなんとかなるものではありません。
むしろ、数字とスケジュールで整えるものです。
✅ 見える化(資金繰り表)
✅ コントロール(入出金の調整)
✅ 準備(借入・補助金・貯金)
この3点を軸に、少しずつ仕組み化していくことが、資金繰り地獄からの脱出につながります。